have a cold
「ク、クマの霍乱だぁ…!!」
ぶはっ、とは自分の言葉に吹き出して、腹を抱えて笑っていやがる。
「うるせーんだよ!てめぇ、何しに…ゲホゲホッ」
くそぉ、咳が止まらねぇ。
「のど、痛いんでしょ?しゃべんなくていーからさ」
はまだクスクス笑いながら、布団にくるまって寝ている俺の額に手を当てた。
その手はすこし冷たくて、なんだか気持ちが良かった。
「結構熱あるね。熱さましと咳止め、持ってきたから」
俺はここ数日、カゼをこじらせて寝込んでいた。普段の俺なら、これくらいどーってことねぇんだが…。
「傷の方はどぉ?」
「お前、病院はいいのかよ?」
「ああ『往診』だもん、いいんじゃない?」
は木の葉病院の医者だ。本人は『あたしって優秀すぎて困っちゃう』などとふざけたことを言ってるが、まんざら嘘でもないようで。
「じゃ、脱いでvv」
「…なっ、何言ってやがんだ!?(///)」
「あたしに診察させないつもり?それともなに、なんか別のコト考えちゃったぁ?」
ニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべている。ちくしょう、昔は素直で可愛かったのに。
「…!」
「あはは、冗談だってば!」
ああ、昔のは素直で可愛かったのに…。
こいつ、とは家が近所で、まぁ幼馴染みたいなモンだ。こいつの兄貴と俺が遊び仲間で、そこにいつもがくっついてきていたのだ。俺のほうも妹みたいに可愛がっていたんだが…。
親の仕事の都合で里から引っ越したが戻ってきたのは、つい一年前のことだった。
「アスマお兄ちゃん、久しぶり」
は、すっかり大人になっていた。
「これから、アスマって呼んでもいい?だって『お兄ちゃん』じゃないんだし」
「かまわねぇよ」
子供の頃の、引っ込み思案で怖がりなはもう居なかった。明るくてハキハキとよくしゃべる、勝気な女になっていた。
「どうしたの?熱上がってきた?」
「なんでもねぇ、ちょっと考え事してただけだ」
「じゃ、上脱いで診察させて」
は、テキパキと俺の診察を済ませた。こういう時はちゃんと医者に見えるから不思議だ。
「やっぱカゼだね。ケガで体力落ちてたせいもあるんだろうけど、ムリしすぎだよ。
ちゃんと体調管理しなきゃダメじゃん!!」
「・・・わかってるよ」
「わかってないってば!なんでそんな無茶ばっかりすんのよ!?」
が怒っている理由もわかる。すこし前、Aクラスの任務でちっとばかし失敗しちまって、俺は木の葉病院に担ぎ込まれたのだ。
たまたま宿直だったが治療してくれたんだが、の「入院しろ」という言葉を無視して、俺は勝手に退院してしまったのだ。
そして、そのままガキどもとDクラスの任務をこなしていたんだが・・・さすがに身体の方がついてこなかったらしく、めったに引かないカゼなんぞを引き込んで、すっかり寝込んでしまっているのだ。
「うるせぇな、お前にはカンケーねぇだろ」
言い過ぎたか、と思ったときにはもう遅くて。はぐっと唇を噛みしめていたかと思うと、突然立ち上がり、
「あたしは心配もしちゃいけないの?!」
と足音も荒く、部屋から出て行った。
ガタガタと台所から音が聞こえてくる。あーあ、ちと言い過ぎたか・・・。
しばらくして、が戻ってきた。
「ほら食べて」
は俺のために粥を作っていたらしい。俺はびっくりして、をマジマジと見つめてしまった。
「食べなきゃ薬飲めないでしょ?」
ほら早くとせかされて、俺は粥を食べた。カゼをひいているせいだろう、正直味はよくわからなかったが、身体は暖まった。
は俺に薬を飲ませ、新しいパジャマを引っ張りだしてきた。俺が汗を拭いて着替えているあいだに、シーツを取り替え、ベッドを整えてくれていた。
「ほら、病人はおとなしく寝るっ!タバコは没収ッ」
は俺をベッドに追いやると、あたりを片付け始めた。
男の独り暮らしだ。キレイなはずがないだろう?
「、もういいからよ。お前、そろそろ病院へ戻れよ」
「こんな汚い部屋に住んでたら病気になっちゃうわよ。・・・ってゆーか、病気になってるか!」
あはは、とまたが笑う。さっきまであんなに怒ってたくせに、もう笑っていやがる。ったく、調子に乗りやがって・・・。
「アスマ、早くお嫁さんでも貰いなよ〜。でも、クマんとこにお嫁さんにくる物好きはいないかぁ」
「そういうてめぇはどうなんだよっ?(ゲホゲホッ)」
「あたし?引く手あまたで困っちゃ〜うvv」
「・・・(沈黙)」
「(ムッ)あ、ウソだと思ってるんでしょ?こないだなんてね、カカシさんに『付き合おうvv』って言われたんだからね」
「なっ・・・(ゴホゴホッ)カカシだとぉ?!」
よりによって、カカシだとぉ?確かにヤツは忍者としては最高レベルだが、女癖の悪さも天下一品だぜ!
「そ〜だよん♪」
はにかっと笑ってみせた。
「・・・で、なんて答えたんだよ?」
「気になる?(ニヤニヤ)」
「別に俺には関係ねぇよ(ゲホ)」
「あっそ。じゃ教えないっ!・・・台所、片付けてくる」
パタパタと台所へ行く足音が聞こえた。・・・マジかよ?確かにの見た目は可愛いかもしれねぇが、中身はなぁ・・・
いや、口は悪いが、こうして俺の見舞いに来てくれてるわけだし・・・いいところもあるんだよな。
しかし、あいつ、なんて答えたんだろう・・・さっき素直に聞いときゃよかったかも。ああ、でもなんで、こんなに気になるんだ?
「くそ・・・」
薬が効いてきたのか、どんどん眠くなってくる。が戻ってきたら、なんて答えたのか確かめなきゃならん・・・。
「アスマ、夕飯なにがいい・・・って、寝ちゃったの?」
が覗き込むと、アスマは穏やかな寝息をたてて、眠っているようだった。ようやく薬が効いてきたらしい。
はホッとため息をついた。
「ほんとにバカなんだから」
ぽすん、と眠るアスマの胸にもたれかかった。バカなのはあたしの方か、とは自嘲した。
「なんでこんなヒゲクマに惚れちゃったんだ・・・」
は子供の頃からアスマが好きだった。言葉はぶっきらぼうだけど、にはいつも優しいアスマ。
引っ越さなきゃいけないとわかった時はずいぶん泣いた。でも、ようやく一年前に再会することができて。
お互い大人になっていたが、アスマはの大好きだったアスマのままで・・・。
素直に気持ちを伝えてみようか、とも思うのだが、勇気がでなかった。怖がりで臆病な自分がイヤで、ここまで頑張ってきたのに。
でもやっぱり、いざという時には昔の自分が出てきてしまう。
『妹以上に思えない』
なんて言われたら、もう立ち直れないかもしれないし・・・。
「バカ熊。ヒゲおやじ。鈍感。この、とーへんぼく!」
思いつく限りの罵詈雑言を並べてみる。
「・・・・・・でも、好き」
ちゅ、とまだ熱っぽい額にくちづけてみた。起きているときにはゼッタイできないから。
かぁぁ、と自分のしたことが恥ずかしくなったは、そそくさとアスマの家を後にした。
「・・・マジかよ」
のくちびるが触れた額に、熱が集まるような気がした・・・。
が俺を『好き』だって?
俺の後ばっかりくっついてきた、あのちびっこいガキだったが?
ちくしょう・・・カゼとは違う熱が上がったのを、どうやって説明すりゃいいんだ・・・。
あの口の悪い、幼馴染のお嬢さんは、今夜も我が家にやってくるつもりらしい。
悪いな、。やられっぱなし、ってのは俺の性分にはあわねぇんだ。
さて、いったいどうやって、あのお嬢さんを懲らしめてやろうか・・・?
【あとがき】
突発的アスマ夢です(笑)なんでこんなの書いてんだ私?明日はヒムロッチの誕生日だとゆうのに、何も書かずに(汗)
でもアスマさんも好きなんですよ、結構。
罠をしかけて待ってるクマさんちへ、のこのこやってくるさん(笑)
さて、どんな罠が待っていたのやら・・・(^^;)
しかし、私の書くヒロインはみんな口が悪いのはナゼ・・・?
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
2003年11月5日