優しい手をもってる。 その2
ボク、ねこです。といいます。
「、ゴハンだよ〜v」
「にゃぁーんっ」
ねこ、まっしぐら・・・(笑)はぐはぐ、もぐもぐ。
「そんなに慌てて食べなくても大丈夫だよ」
おねえさんがボクを見て、クスクス笑っている。
ボクはおねえさんが大好きv
ボクがいたずらをしたときには怖い顔して「メッ!」って怒られちゃうけど、普段はとーっても優しい。
読書をしているおねえさんの膝にちょこんと乗るのが、ボクは大好き。
おねえさんは読書に夢中になっちゃうけど、ときどきボクの背中をそっと撫でてくれるんだ。
その手はとっても柔らかくて優しくて・・・。ボクはいつも膝の上で眠っちゃうんだ。
おねえさんを独り占めしているこの時間が、ボクはとっても大切なんだ。
・・・でも・・・・・・でも、それもこれも、アイツが来るまで・・・。
そう、あの銀色アタマ・・・ッ!(怒)
「ただいまー、v」
「おかえり・・・って、イチイチ抱きつくなーッ!」
おねえさんと、この銀色アタマは、別に一緒に住んでるワケじゃない。でも、なにかとゆーと、この銀色アタマは、おねえさんちへやって来るのだ。
「、冷たーい!久しぶりに会ったってゆーのに」
「久しぶりってね・・・おととい会ったばっかりでしょ」
「オレは、と片時も離れたくないのっ!」
「・・・(無言)」
そう言って、銀色アタマはおねえさんにギュッと抱きついた。
む、むむむ・・・おねえさんはボクのなんだぞっ!
「にゃーん」
ボクはおねえさんの足元に擦り寄っていった。
「どうしたの、?んー?」
おねえさんは優しく微笑んで、ボクを抱き上げてくれた。
「にゃあんv」
「なあに?遊んで欲しいの?」
おねえさんは笑いながら、ボク用のおもちゃ「ねこじゃらし」を持ってきた。
「ほら、!」
「にゃーんっ」
ボクが、パシッとねこじゃらしを捕まえると、おねえさんは喜んでもっと遊んでくれる。
「あははは、上手だよ、!ホラ、そっち」
「にゃーんっ」
「きゃー、可愛いっ!」
おねえさんは、ボクに夢中だ(えっへん!)
「・・・」
そんなボクたちをジトーッと見つめていた銀色アタマ、なんて言ったと思う?
「ってばー!つまんないよ〜!オレの相手もしてよー」
「・・・もう、カカシったら。お茶でも淹れてあげるから、ちょっと待ってて」
おねえさんはキッチンへ行ってしまった。
「しばらく一緒に遊んでてねー」
なんで、ボクが・・・こんな銀色アタマと遊ばなきゃいけないんだ!
「「・・・・・・」」
それは銀色アタマも同じだったみたいだ。
「・・・ったく、拾ったばっかりの頃は可愛かったのになぁ」
銀色アタマは突然ボクを抱き上げて、顔の前でユラユラと揺らした。
ボクは今でも可愛いやいっ!
シュッ!(←ねこパンチ)
うぬ・・・よくぞかわした!
そういえば、お隣の先輩ねこさんが言ってたけど、コイツは本当はすごい忍者らしい。
どー考えてみても、コイツが「木の葉一のエリート忍者」とは思えないんだけど。
なにかというと、おねえさんにベッタリ甘えて、よく怒られてる。でも、怒られても嬉しそうにしているから不思議だ。
ボクは身を捩って、銀色アタマの手の中から逃げると、毛を逆立てて威嚇してみた。
「おまたせ、お茶入ったよ」
カチャカチャと食器の触れる音をさせながら、おねえさんが戻ってきた。
「にゃんv」
ボクは慌てておねえさんの足元に擦り寄った。
「こら、。くすぐったいよ〜」
「・・・このねこかぶりめ」
銀色アタマが呆れたように言った。
失礼なっ!ボクはれっきとしたねこですよーだっ!
「なに言ってんの、カカシ?」
おねえさんが不思議そうに言う。
そうだよね、ねこに向かって「ねこかぶり」っておかしいよね〜?
「だってさ、コイツ、の前だと全然態度違うんだもん。オレにはねこパンチしてくるのに」
「カカシがいじめたりしたんでしょ?そんなコトしないもんね、?」
「にゃー(そうだよ!)」
「ほらね」
おねえさんはボクの味方だもーん♪
それから一週間くらい、銀色アタマは姿を見せなかった。
おねえさんはたくさんボクと遊んでくれたけど、時々ふっと寂しそうな表情をすることがあった。
「にゃあ・・・」
おねえさんが心配になって、ボクが足元にすりよっていくと、
「ごめんね、心配かけちゃって。大丈夫だよ」
と、おねえさんはボクを抱っこしてくれた。
ボクだけじゃ、ダメなのかな?・・・あの銀色アタマじゃないとダメなの?
ボクはちょっと哀しい気持ちになった。
やっぱり、銀色アタマはキライだ・・・っ!
静かな夜だった。しとしと降る雨の音だけが聞こえていた。
おねえさんはお気に入りのクッションにもたれて、お気に入りの作家の本を読んでいた。
・・・読んでいるわりには、ページが進んでいないのが気になったけれど。
ボクはおねえさんのヒザに陣取って、ときどきボクを撫でてくれるおねえさんの手の優しさを感じながら、ウトウトしていた。
カチャ。
玄関で音がした。・・・銀色アタマがやってきたみたいだ。
「ただいま」
「おかえり、カカシ。雨に降られちゃったの?」
「うん・・・。シャワー、借りるね」
銀色アタマはびっしょりと濡れていて、ベストの色がすっかり変わってしまっていた。
いつもはあちこちに飛び跳ねているその髪も、たっぷりと水分を吸って、しずくが滴っていた。
なんだか、いつもと違う・・・?
いつもなら一番最初におねえさんに抱きついて、そのつぎにボクにちょっかいを出しにくるはずなのに。
おねえさんも何か感じるのか、心配そうに銀色アタマの背中を見ていたけれど、読書に戻ってしまった。
しばらくして、シャワーから銀色アタマがもどってきた。
いつもならおねえさんにぴったりくっついて座るくせに、今夜はちょっと離れて座っていた。
どうかしたのかな?
ボクはなんだか不安になって、おねえさんを見上げた。すると、おねえさんはごめんね、と小さく呟いて、ボクをヒザから降ろした。
「こっち来なさいよ」
おねえさんは手を伸ばすと、銀色アタマの髪をグイと引っ張った。
「え!??」
銀色アタマはバランスを崩して、おねえさんのヒザの上に倒れこんだ。
「バカね・・・。本当にしんどいときは甘えてもいいの」
「・・・ゴメン」
その瞬間、ボクにはわかってしまった。
おねえさんは、この銀色アタマのことが本当に大切なんだ、と。
銀色アタマもおねえさんのことが大切なんだと。
ボクを撫でていてくれたおねえさんの手が、銀色の髪を愛しげに梳いている。
銀色アタマは、ホッとしたような、なんとも穏やかな表情を浮かべていた。
そして、おねえさんも・・・。
何があったのか、ボクにはわからない。でも、それは銀色アタマをひどく落ち込ませるようなコトで。
ああ、そうか・・・。
おねえさんの手はとっても不思議なんだ。おねえさんの手はとっても優しくて、その手に触れられれば、辛いことも哀しいことも、どこか遠くへ行っちゃうんだ。
だから、銀色アタマの辛かったコトもどこかへ行っちゃって、あんな穏やかな表情をしてるんだ。
のーてんきそうな銀色アタマだけど、いろいろあるのかな・・・?
ボクはトットットと歩いて、おねえさんに膝枕されている銀色アタマのそばに寄っていって、ぴったりとくっついて座ってみた。
銀色アタマは、ボクがくっついて座ったことに、ちょっと驚いたみたいだった。
「・・・ありがとな」
でも、ふっと優しげな微笑を浮かべて、ボクを撫でてくれた。
おねえさんの手よりも、ゴツゴツしていて、骨ばったごつい手。
だけど、ボクに触れる手はとても優しかった。
何度も何度も、ゆっくりとボクを撫でてくれる。ボクはすっかり気持ちよくなって眠ってしまいそうだった。
シトシトと降る雨の音と、ボクを撫でる優しい手の感触・・・。
――ボクは突然思い出した。
ボクに触れた優しい手・・・それはこの手だったのに。
びしょぬれだったボクを抱き上げてくれたのは、この手だったのに。
『さ、帰ろうか』
あれはこの声だったのに。どうしてボクは忘れていたのだろう・・・?
優しい手を持っているのは、おねえさんだけだと思っていた。
でも、銀色アタマも優しい手を持ってた・・・。
これからは『銀色アタマ』じゃなくて、『カカシ』って呼んでやってもいいかな。
ボクはそんなことを思いながら、いつのまにか眠ってしまっていた・・・。
【あとがき】
『カカシ生誕祭』さまのコラボ企画で書かせていただいた創作の続きでございます。
銀色アタマ・・・すみません(汗)しかも出番もセリフも少なく・・・。にゃんこ萌え?(笑)
カカシ先生に拾われたにゃんこは強くたくましく(?)成長しているようですv
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
2004年10月1日