Call Me
「うう・・・」
「ハイハイ、早く薬飲んで、さっさと寝ちゃってくださいな」
「・・・ちゃんてば冷たーい(涙)・・・ハ、ハックション!」
さっきからウンウン唸ってるのは、銀色アタマ。ちゃっかりおねえさんのベッドを占領しちゃったりして(怒)
おねえさんは腕組みして、冷たい視線で銀色アタマを見てた。
ふふん、いい気味〜♪
「当たり前でしょ?新年会で飲んで帰ってきて、そのままコタツで寝ちゃって風邪ひいたヒトに優しくできると思う?」
「・・・」
銀色アタマは昨夜『新年会』とかいうヤツに行って、おねえさんはずっと帰りを待っていたけれど、とうとう待ちきれずにボクと一緒に寝ちゃった。
で、朝起きてみると、コタツでぐぅぐぅ寝てる銀色アタマ発見ーっ!
・・・でもボク、銀色アタマが帰ってきたの、全然気がつかなかったんだよね。
お隣の先輩ネコさんが言うように、銀色アタマってすごい忍者なのかなー?
「ほら、、朝ゴハンにしよ」
「にゃあ〜んv」
「あ、ちゃーんっ」
情けない銀色アタマの声が聞こえてきた。でも、おねえさんはそれを無視して、ボクの朝ゴハンの用意をしてくれた。
「おいしい?」
「みゃうv」
はぐはぐ。もぐもぐ。
おねえさんの選んでくれたキャットフード、おいしいんだよね♪
おねえさんはボクの頭を一撫でしてから、戸棚からおなべをとりだした。
お米をいれて、水を入れて、火にかけてる。
・・・なに作ってるんだろ?
おねえさんは、朝はパンとミルクなのに。
朝ゴハンを食べ終わって、ボクはおねえさんをじっと見てた。
今日のおねえさんは、なんだかとっても忙しそう・・・。
お休みの日の朝は、いつもボクと遊んでくれるのになー。つまんないの。
「にゃーんv(ボクと遊んでよー)」
「ああ、ゴメンね、。今日はちょっと遊んであげられないの」
おねえさんは申し訳なさそうにボクの頭をクシャクシャと撫でた。
「わーっ!おなべが吹き出ちゃう!!」
あわてておなべをグルグルかき回して、次におねえさんはたまご焼きを作り始めた。
なんで今日はボクと遊んでくれないのかな・・・?
「カカシ、どう熱は?ゴハン食べれそう?」
「うん・・・」
おねえさんは心配そうに銀色アタマを覗き込んでる。
「おかゆ作ってみたんだけど、食べる?」
「うん・・・」
「じゃ、ちょっと待っててね」
おねえさんは台所へ戻って、お盆の上にいろいろ載せて戻ってきた。
「ハイ、お待たせ。熱いから気をつけてね」
銀色アタマはごそごそとベッドから起き上がった。
「あーんv」
「・・・・・・」
まるで小鳥のヒナみたいに、銀色アタマが口を開けて待っていた。
おねえさんは・・・当然呆れ顔。
「あーんv」
「・・・ナニシテルンデスカ、カカシセンセイ?」
「えー?だって、オレ、病人だも〜ん。優しくしてよ〜」
ちゃんとフーフーしてね、などとフザけたことを言ってる。
やっぱり、銀色アタマが『里一番のエリート忍者』なんて、嘘っぱちだーっ!
こんな甘えん坊がエリート忍者のハズがないっ!!
「・・・もう仕方ないなぁ」
おねえさんは小さくため息をついたけれど、スプーンを手にとって、銀色アタマの口の中へおかゆを入れてやっていた。
「えへへ、おいしv」
「食べたら、薬飲んでちゃんと寝るのよ?」
「ハイハーイv」
子供みたいに笑ってる銀色アタマを見て、おねえさんもクスクス笑っていた。
おかゆを全部食べて、薬も飲んだ銀色アタマはベッドに横になっていた。
おねえさんは後片付けをしに台所へ行ってしまった。
「ゴメンな、今日はちゃんをオレに譲ってくれよ」
そう言って、銀色アタマはボクの頭を撫でた。
その手は、いつもよりほんのちょっと熱いような気がした・・・。
「・・・みゃ(フン!)」
ちぇ・・・でも仕方ないか。病人相手にイジワルしてもつまんないし!(←イジワルしてたのか?)
今日のところはおねえさんを譲ってやるか・・・。
ボクはいつもの指定席のソファのクッションの上に陣取ることにした。
「ありがと、」
オマエに礼なんか言われたくないやいっ!プン!
銀色アタマはしばらくベッドの中でゴソゴソしていたけれど、ようやくいい体勢を見つけたのか布団の中から頭だけ出して、おねえさんを見つめていた。
・・・その顔はとっても幸せそうだった。
さっきからおねえさんは忙しそうで、食器を洗ったり、洗濯をしたりしてた。
別に銀色アタマにずっとつきっきりってワケじゃない。それでも銀色アタマはとっても幸せそうだった。
おねえさんが視界を横切るたび、とても嬉しそうな顔をする。
――なんだ、銀色アタマもおねえさんが大好きなんだ。
「カカシってば眠れないの?あ、それともあたしがガサガサしてるから眠れない?」
眠らずに起きている銀色アタマに気づいたのか、おねえさんはエプロンで手を拭き拭き、ベッドサイドにやってきた。
「ううん。ちゃんが居るのが嬉しいんだーv眠るのがもったいないんだも〜ん」
「・・・バカ?」
「えー?オレは『ちゃんバカ』なのv」
おねえさんは額に手を当てて、頭を振った。
「・・・バカは風邪ひかない、っていうのは迷信だったのね」
「うう、ちゃんてばヒドいーっ」
「ったく、もう!いい加減に寝なさいよ!」
おねえさんに叱られて、銀色アタマはちょっとシュンとなってた。
「だってさー、ちゃんとこんなに長い時間、一緒にいられるのって久しぶりなんだもん」
銀色アタマはよくこの部屋へやってきたけど、こんなに長い時間居るなんて珍しい。
「ちょっと顔見に寄っただけだから」
そう言って、ほんの一瞬だけおねえさんに会いにきて帰ってしまう。
それでも、おねえさんは嬉しそうにしてる。ときどき、ボクはそれに妬けちゃうんだけど・・・。
「・・・はやく寝なさい」
そう言って、おねえさんはベッドの脇に腰掛けると、小さな声で唄を歌い始めた。
「それって子守唄?」
「そ。コドモを寝かしつけるには、これが一番でしょ?」
おねえさんはクスクス笑いながら、銀色の髪をそっと撫でていた。
「・・・オレ、ちゃんの声が好き。いつまでもずっと聞いていたい気がする」
「こんな声でいいなら、いつでも歌ってあげるわよ」
おねえさんの声はとっても優しい。おねえさんがボクの名前を呼んでくれるたび、ボクはとっても幸せな気分になれるんだ。
それはきっと、銀色アタマも同じなんだろうな・・・。
おねえさんの子守唄を聞きながら、いつのまにかボクも眠ってしまっていた。
その次の日も、銀色アタマはめちゃくちゃおねえさんに甘えていた。
いつもならおねえさんに叱られるんだけれど、相手が病人のせいかおねえさんは銀色アタマのワガママをきいてやっていた。
でもね、でもね!さっき、ボクを撫でた手は熱くなかったよー?!
「カカシ、熱は・・・?」
「あ・・・ヤバ(汗)」
ヒョイと寝室を覗き込んだおねえさんに、体温計をさかさまに振ってるのを見つかって、銀色アタマはこっぴどく叱られていた。
へへーんだっ!いい気味〜♪
今日はボクがおねえさんを独り占めしちゃうもんね!
【あとがき】
『1周年感謝企画』にご参加いただいた良美さまのリクエスト創作です。いただいたリクエストは
・風邪をひいて寝込んでいるカカシ先生を介抱してあげる
・糖度高め
だったのですが、あんまり糖度は高くありませんねー。すみません(^^;)
しかも、にゃんこメイン・・・(汗)お待たせした挙句、こんなのでスミマセーン!
良美さま、リクエストありがとうございました。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
2005年1月5日