ハピネス。
「だから、ゴメンってば!」
「・・・」
「もうっ、さっきからずっと謝ってるのに!」
「・・・・・・」
あ、ボク、ねこです。
おねえさんと一緒に住んでます。
おねえさんってね、とっても可愛くって優しいんだ。だから、ボクはおねえさんが大好きv
でも、今日のおねえさんはちょっとご機嫌ナナメみたい。それというのも・・・。
「もう、カカシってば!いい加減、機嫌直してよ?」
「・・・」

おねえさんの隣でむぅっとくちびるを尖らせて拗ねているのは、あの『はたけカカシ』なんだ。
そう、あの『写輪眼のカカシ』っていうヒト。お隣の先輩ねこさんが言うには、
「木の葉一のエリート忍者なのよ!」
らしい。・・・ボクには信じられないけど。
だってね、だってね、そんなすご〜いヒトが、膝をかかえて子供みたいに拗ねてるなんておかしくない?
だから、ボクは『はたけカカシ』じゃなくて『銀色アタマ』って呼んでるんだ。それに、ボクとおねえさんが
遊んでるとすぐ邪魔しにくるから、『銀色アタマ』で十分なの!
「だから、カカシのお誕生日、忘れちゃってゴメンなさい!」
「・・・別に怒ってないよ」
最近、おねえさんはとっても忙しくて、銀色アタマのお誕生日をウッカリ忘れてしまっていたらしい。
おねえさんに誕生日を祝ってもらおうとルンルン気分でやってきたのに、当のおねえさんに忘れられていて、
銀色アタマはすっかりおかんむりらしかった。
さっきからずぅっとおねえさんが謝ってるのに、銀色アタマは拗ねたまま。
・・・大人気ないと思わない?おねえさんがあんなに謝ってるのに。
「もー、お願いだから機嫌直してよ〜」
「だから、別に機嫌悪くないって!」
「だって、怒ってるもの!」
今度はおねえさんの機嫌が悪くなってきちゃった。いつもはニコニコしてる優しいおねえさんなのに・・・。
「・・・あたし、夕飯の買い物に行ってくるから」
バタンッ!
いつもよりかなり荒っぽく玄関のドアを閉めて、おねえさんは買い物に行っちゃった。
あーあ、ボク、知ーらないっと!
「・・・」
・・・。
「・・・・・・」
・・・・・・。
「あーっ、もうっ!」
わ!ビックリした!
銀色アタマはいきなり、頭をわしゃわしゃと掻き毟った。かと思うと、ゴロンとソファに倒れこんだ。
「もう、なんでオレ・・・」
ん?ちょっとは反省してるの?
「・・・オレのこと、大人気ないと思ってるデショ」
「にゃー(もちろん!)」
銀色アタマが情けなさそ〜な顔をして、ボクを見てた。
「けどさぁ、ちょっとは期待しちゃうデショ?可愛い彼女が『お誕生日おめでとう!』ってお祝いして
くれたりするのをさ・・・。誕生日に任務入れないように努力もしたのに、だよ?
そりゃ、ちゃんがこの頃忙しかったのは知ってるけど」
ハァ〜とタップリ幸せが逃げていっちゃいそうな深いため息をついて、銀色アタマはポツリとつぶやいた。
「ちゃんが帰ってきたら謝らなきゃな・・・」
そうだ、オマエが悪いんだからなっ!
おねえさんはずっと忙しくて、ボクとも全然遊んでくれなかったんだぞ!(←コレが言いたかったらしい)
――しばらくして、おねえさんが買い物から帰ってきた。
いつもなら、ひとしきりおしゃべりしたあとで『ゴハン作ってくるね』と言うのに、今日は無言で台所へ・・・。
ボクが見ても気の毒なくらい、銀色アタマは落ち込んでた。・・・ちょっと可哀想かも?
謝りに行こうかどうしようか、悩んでウロウロしているその姿を見ていると、銀色アタマはホントに
おねえさんのことが好きなんだなぁとボクは思った。
どうしようもなく大切で、好きだからこそ期待もしてしまうし、好きだからこそ嫌われたくない。
ボクにはまだ、そんな大切なコは見つかっていないけれど・・・。
「ゴハン、できたよー」
「・・・ハーイ」
「みゃー(ハーイ)」
台所からおねえさんの呼ぶ声が聞こえた。ボク、おなかペコペコだったんだよね〜。
結局、銀色アタマはおねえさんに謝ることができずにいた。恐る恐る、おねえさんの様子を
探るようにしながら食卓につく。
あ〜、サカナの焼ける匂いだ〜v
「ぷっ」
「な、何よ」
銀色アタマは何がおかしいのか、突然ぷっと吹き出した。
それを見ていたおねえさんはちょっと照れたような、ちょっと怒ったような顔になった。
なんだろ・・・?
「だってさ・・・」
ボクがひょいと椅子に乗ってテーブルの上を見てみると、そこには焼き魚と赤いご飯があった。
あれー?ご飯が赤いや。赤いご飯って、初めて見たかも。
「鯛の尾頭付きに赤飯なんだもん」
「だって、誕生日のお祝いでしょ」
ボクが不思議そうに赤いご飯を見ていたのに気づいたのか、銀色アタマがくすくす笑いながら言った。
「これは赤飯って言って、おめでたい時に食べるんだ。そうだなー、例えば
結婚式とか・・・そうそう、女のコがしょ・・・」
バキッ!
驚くようなスピードでおねえさんの手が銀色アタマの頭を思いっきり叩いてた。
「痛っ!」
「ウチのコにヘンな事を教えてないでくれる?」
「みゃー?」
おねえさんは銀色アタマを睨んでから、ボクにも赤いご飯をちょっとだけよそってくれた。
それから、いつもは『しょっぱいからダメ』って言って食べさせてくれない焼き魚も、
ボクのお皿にちょっとだけのっけてくれた。
「今日はお祝いだから特別よ」
もぐもぐ・・・んっ?
お、おいしーっ!うわぁ、すっごくおいしいよ、このサカナ!
「みゃーv」
「コイツ、鯛の塩焼きが気に入ったみたいだよ」
ものすごい勢いでサカナを食べているボクを見て、銀色アタマはちょっとおかしそうだった。
・・・あ、もうなくなっちゃった。
「みゃ〜(もっとちょうだい!)」
「もうダメ。おまえには塩辛いでしょ」
おねえさんに可愛くおねだりしてみたけれど、『メッ』ってされちゃった。
「ほら、もうちょっとだけな」
「ダメよ、カカシ」
「もうちょっとだけだよ。コイツもオレの誕生日をお祝いしてくれてるんだから」
銀色アタマがボクのお皿にサカナをちょっと足してくれた。
もぐもぐ。こんなにおいしいサカナが食べられるんだったら、毎日が『お誕生日』でもいいかも〜♪
「もう、カカシったら」
「ゴメン、ゴメン。もうあげないからさ」
銀色アタマとおねえさんとボクは楽しい夕食を済ませたのだった。
「ねー、カカシ?コーヒー飲む?」
「んー、後でいいや。あ、ちゃん、ちょっとこっちに来て」
「なに?」
洗い物が終わったおねえさんが、リビングのソファに座っている銀色アタマのところへやってきた。
銀色アタマは、ちょいちょい、とおねえさんを手招きしてる。
「どうかし・・・わわっ!?」
近づいてきたおねえさんに手を伸ばすと、銀色アタマはグイとその腕を思いっきり引っ張って、
自分のヒザの上に強引に座らせた。
「ちょっ・・・!?」
慌てて立ち上がろうとしたおねえさんだったけど、銀色アタマにギュッと抱きしめられて、
簡単に阻止されちゃってた。
「・・・ありがと、ちゃん」
「カカシ・・・?」
銀色アタマは、抱きしめたおねえさんの首筋に顔を埋めるようにして呟いていた。
「大人げなくてゴメン。なんて言うかさ・・・オレ、どんどんゼータクになっちゃってるみたいで」
「ゼータク?」
「ちゃんがオレの誕生日をお祝いしてくれるのは当たり前みたいに思ってて・・・。
ホントは、オレみたいなヤツの隣にちゃんが居てくれるだけでも幸せなのにさ」
「カカシ・・・」
さっきからずっと銀色アタマのヒザの上から逃げようとしていたおねえさんだったけど、
スッと手を伸ばして銀色アタマを抱きしめていた。
「あたしの方こそ、ごめんね。せっかくのお誕生日を忘れちゃうなんて・・・」
「そんなことないよ。ちゃんとお祝いしてくれたし」
「・・・お誕生日おめでとう、カカシ」
「ありがと、ちゃん」
あーあ、イチャイチャが始まっちゃったよ・・・。
いつもならここでおねえさんの足元にすり寄っていって邪魔するところなんだけど。
ちぇ・・・『お誕生日』なら仕方ないか・・・。今日のところは、おねえさんを譲ってあげるとするか!
けど、今日だけなんだからねっ!ホントにホント、今日だけなんだからっ!(←しつこく念押し)
じゃ、ボクは夜の散歩に出掛けようっと。ココにいると、当てられちゃうもんね。
ボクにもおねえさんみたいな可愛い彼女が見つかるといいな〜v
【あとがき】
『カカシ生誕祭&アスマタン’05』で書かせていただいたコラボ作品です。
管理人さまのご好意でイラストを転載させていただきました。ありがとうございます!
ぶぅたれてるカカシ先生を見ているにゃんこです(笑)
結構『銀色アタマ』を気に入ってるにゃんこなのですが、素直に認めたくないようです(^^;)
お誕生日おめでとう、カカシ先生!
2005年11月6日