Halloween Night
ピンポーン!ピンポン、ピンポン、ピンポーン!!
「・・・うるせぇ」
寝入りばなをチャイムの音で起こされて、俺はものすごく不機嫌だった。たとえ、ドアの向こうにいるのがアイツだったとしても。
だるい身体を無理矢理起こして、玄関へと向かう。
カチャリ。
「Trick or treat!お菓子をくれないと、いたずらしちゃうぞv」
月光を背にしてそこに立っていたのは、やっぱりだった。
バタンッ!俺は無言でドアを閉めた。
すぐさまドアを叩かれた。チッ!
「ちょ、ちょっと、ゲンマってばー!?久しぶりに彼女が逢いにきたってゆーのに、
その態度はなんなのよっ?」
ハロウィンだかなんだか知らないが、ご丁寧に魔女がかぶってそうなとんがり帽子をかぶったが立っていた。
俺はもう一度ドアを開けた。
「うるせぇな、近所迷惑だろ。ここ2週間、ロクに寝てねぇんだよ」
「そんなの、あたしだって2日連続徹夜だわよっ」
薄暗い玄関先では気づかなかったが、の目は真っ赤に充血していて、寝不足なのが一目瞭然だった。
「仕事か?」
「そーよ。一応終わったけどね」
テキトーにやりゃいいだろ、と言いかけて、俺は口をつぐんだ。以前そう言って、に思いっきり怒られた記憶があるのだ。
「そりゃ、あたしの仕事は失敗したって、ゲンマみたいに命にかかわったりしないわよ。
でもね、あたしはお金をもらってるの。お金をもらって、仕事してるの。
お金をもらっている以上、責任があるのよ」
わかった?と、思いっきり頬をつねられ、俺はうなずくしかなかった。
でも、俺が言いたかったのは、もっと自分を大切にしろってことだったんだけどな。
責任感の強いは、ときどき無理をしすぎる。
「でも、なんで俺が帰ってきたこと知ってるんだ?」
「カカシさんが教えてくれたの」
の話によると、今日昼飯を買いにでたところで、偶然出会ったらしい。
偶然かどうかは、非常に怪しいが・・・。
「『お昼ゴハン、一緒に食べてくれたら、いいコト教えてあげるv』って言われたから、
一緒に行ったの。てっきり奢らされるんだと思ってたんだけど、お昼奢ってくれたし、
今日も残業って言ったら、おやつにクッキー買ってくれたんだー。
でね、ゲンマが今日帰ってくるって教えてくれたの」
――絶対、偶然じゃねぇな・・・。他人のオンナにちょっかいだすなっての!
「2週間も任務についてたゲンマさんが可哀想だと思って、カボチャの煮物を
差し入れにきたとゆーのに、門前払いされちゃうなんて」
と言って、はぷぅっとふくれた。
は紙袋を持っていて、ひょいと覗いてみるとタッパーが入っていた。
たぶん、それに俺の好きなカボチャの煮物が入っているのだろう。
ったく、自分だって徹夜明けのクセしてよ・・・。
「ほら、入れよ」
「ううん、いい。寝るところだったんでしょ?起こしちゃってゴメンね。
これ渡したかっただけだから」
は紙袋をヒョイと持ち上げて見せ、俺に渡して帰ろうとする。
「おい、待てって」
「疲れてるんでしょ?早く寝なさいよ」
そりゃお互いさまだろ?・・・ったく、コイツときたら。
「待てよ。俺に逢いにきたんだろ?」
の顔が見る間に赤くなっていく。
「・・・そ、そんなんじゃないわよっ!に、任務で疲れてるだろうなと思って
ちょっと差し入れにきただけなんだからっ」
――前言撤回。俺の帰還を知らせてくれたカカシに感謝だ。
「入れって」
俺は半ば強引にを部屋に招きいれた。
「すぐ帰るから・・・っ」
「帰んなくていい」
の手から荷物をとりあげ、背中を押して狭い寝室へと追いやる。
「ちょ、ちょっと?!」
俺は慣れた手つきでのシャツのボタンを外していく。
「何してんのよっ?」
「こら、暴れんな」
は服を脱がされまいとジタバタするが、所詮俺に敵うわけがない。
俺はあっという間にをスリップ一枚の姿にすると、ベッドへコロンと転がした。
「うわぁ?!」
「いちいちうるせぇ女だな」
2日連続で徹夜したわりには元気じゃねぇか。
を奥へと追いやって、俺も狭いベッドへもぐりこむ。
「俺は眠い。わかるな?」
「う、うん?」
「お前も眠いんだろ?」
「そ、それはまぁ・・・」
「だったら寝ろ」
「へ?」
キョトンと俺を見る。俺に襲われるとでも思ってやがったのか?
なんならご希望どおり襲ってやってもいいが、生憎徹夜明けの恋人に襲いかかる趣味はねぇ。
「ほら、早く寝ろよ」
「う、うん・・・」
秋の夜はほんの少し肌寒くて、柔らかくて温かなを抱きしめて眠るにはぴったりの夜だった。
後ろから抱きしめると、その小さな身体は俺の腕の中にすっぽりと収まってしまう。
しばらくゴソゴソ動いていただったが、やがてすやすやと穏やかな寝息が聞こえてきた。
身体から力が抜けて、くたり、と俺に身を預けてくる。
どうしてだろうな、お前がそばに居るとホッとする俺がいる。
お互い強情なところがあるから、意地を張り合って何度も喧嘩した。
けれど、俺が里に戻るたび、どんなに忙しくてもお前は一番に俺に逢いにきてくれる。
最近じゃ、お前に逢わなきゃ里に戻ってきた気がしねぇくらいだ。
なぁ、?
これからもずっと、この里で俺を待っててくれよ。お前が待っていてくれるなら、
俺は絶対にここへ帰ってくるから。
こんなこと、起きてるときには恥ずかしくて絶対言えねぇけど、さ・・・。
俺はの甘い香りを吸い込んで、ゆっくりと目を閉じた。
――そういや今日はハロウィンだったな。
目が覚めたら、に聞いてみようか。
「Trick or treat!」
ああ、その前にのお菓子を隠しておかないといけねぇな。
さて、どんないたずらをしてやろう・・・?
【あとがき】
「コレ、誰・・・?」というツッコミはナシでお願いします(滝汗)
うう、難しいよー、ゲンマさんっ!一応コミックも読み直してみたのですが・・・。
カカシ先生がちょこっと登場するのは、管理人の愛ゆえ、ということで(笑)
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
2004年10月31日