HappyBirthDay to You !!
「ふぅ・・・」
マンションの駐車場について、俺はため息をもらした。
文化祭に向けて、吹奏楽部の指導はもちろんのこと、クラス出展の準備もあり、俺は多忙な日々を送っていた。
昼間は生徒達と文化祭の準備、夜は夜で職員の打合せ、それに翌日の授業の準備と、さすがの俺も疲労を感じていた。
の方も、年明けに本番を迎えるプロジェクトがあるとかで、多忙な日々を送っているらしい。
・・・らしい、というのは最近彼女と逢っていないからで、短いメールのやりとりすら満足にできていない状態だった。
車のドアをロックしているとき、ふと明日が自分の誕生日であることを思い出した。
誕生日がめでたいという歳でもないが、に祝って欲しかったと思う自分がいた。
自分もも、特に記念日などにこだわるタイプでもなかったが、もし自分が彼女に連絡すれば、お祝いに駆けつけてくれるだろう。
だが、忙しい彼女に負担をかける訳にはいかない・・・。
「ん?」
駐車場からふと見上げた自分の部屋に、灯りがともっていた。
俺の部屋のカギを持っているのは、義人とだけだった。義人は店の営業中だろうし、が来ているのだろうか?
にカギを渡したのはずいぶん前だが、彼女はそれを使ったことはなかった。来る前に必ず連絡をくれるのが常で、俺の留守中に部屋に入ろうとはしなかった。
帰宅してに出迎えられる、という幸運にはまだ俺は巡りあってはいない。
何かあったのだろうか?
俺は部屋へと急いだ。
「おかえりー」
俺を出迎えたのは、の明るい声とおいしそうな料理の匂いだった。
「ゴメンね、勝手に入っちゃって。電話しようかと思ったんだけど・・・」
申し訳なさそうにが言う。
「いや、問題ない・・・久しぶりだな」
本当は、家に帰ってきてが居たことが嬉しいのに、うまく言葉にすることができない。
「ほんとだね。ねぇ、ゴハンまだだよね?」
「ああ」
「良かった!一緒に食べよ」
「では着替えてくるとしよう」
「うん。じゃ仕度するね」
俺がスーツを着替えてダイニングに入っていくと、が赤ワインのボトルを差し出した。
「平日だけど、少し飲まない?」
俺はウィークデーはほとんど酒を飲まない。飲みすぎて、明日の授業に差し支えると困るからだ。
「そうだな、少しくらいなら。君は食事を済ませたのか?」
「ううん、まだだよ」
「俺が戻るのを待っていたのか?」
「うーん、まぁね」
でもいつもの晩ゴハンより早いくらいだよ、と彼女は笑った。
「もう11時前だぞ?いつもこんなに遅いのか?」
「晩ゴハンは12時くらいかな。あ、帰り道は気をつけてるからね!」
俺の表情が曇ったのを感じたのだろう、は慌てて言った。
「帰りは誰かと一緒に出るようにしてるし、ウチのマンションの駐車場は明るいし」
「だが、気をつけるんだぞ」
「うん、大丈夫だよ。それより早く食べようよ、ねっ」
にこにこと微笑む彼女に、張りつめていた神経がほぐされるような気がした。
「今日のメニューはビーフシチューでーす♪」
よく煮込まれたシチューと赤ワイン、そして目の前で微笑む。久々に楽しい夕食の時間だった。
楽しい食事を終えたのは日付が変わろうかという時刻だった。
「、まだ時間はいいのか?」
「うん、大丈夫。まだデザートもあるんだから」
片づけを手伝おうとした俺をリビングへと追いやり、はデザートの準備を始めた。
リビングへと追いやられた俺は、が好きだと言ったジャズのCDをかけた。さすがに夜も遅いので、音量は控えめだが。
ソファに座って、のんびりと音楽に身を任せる。久しぶりに、ホッする時間を持てたような気がする。
「お待たせ〜♪」
カチャカチャとコーヒーカップを鳴らしながら、がトレイを持ってリビングにきた。
「ありがとう。いい香りだ」
「こんな時間に飲んだら、眠れなくなっちゃうかなぁ?」
「そんなこともないだろう」
「ケーキあるから、やっぱりコーヒーがいいかなぁと思って」
「ケーキ?」
そう言われてトレイを見てみると、ちいさなケーキがちょこんと皿の上にのっている。
それには、チョコで文字が書かれていた。
「Happy...Birthday ....?」
「お誕生日、おめでとう!零一さん」
「・・・」
びっくりして俺が何も言えないでいると、が慌てて時計を見た。
「えっ?まだ12時過ぎてなかった?!」
「・・・いや、日付が変わっているから、確かに俺の誕生日だが」
えへへ、とは恥ずかしそうに笑った。
「あのね、どーしてもいちばんに『おめでとう』って言いたかったの・・・ちょっと子供っぽかったかな」
「・・・」
「プレゼントもあるんだよ♪取ってくるね」
ソファから立ち上がろうとしたの腕を取って、思わず抱きしめていた。
「・・・零一さん?どうかした?」
「・・・ありがとう」
ぎゅっと彼女をきつく抱きしめる。
「ありがとう、」
「零一さん・・・」
も俺の背に手を伸ばし、優しく抱きしめてくれる。
「明日・・・もう今日だけど、お仕事なのにゴメンね」
「いや、君のほうこそ仕事があるのに・・・いろいろ準備までして」
「私なら大丈夫。午前中だけお休みとれたんだvvホントは一日休んで、もっとゆっくりお祝いしたかったんだけど」
にこにこと笑って答えるが、愛しくてしかたがなかった。
目覚し時計の鳴る1分前に目が覚めた。彼女を起こさないように、時計を止める。
「・・・よく寝てるな」
朝目覚めて、彼女が傍らで眠っている喜びを味わう。
さすがに疲れているのだろう、ぐっすり眠っている。・・・まぁ、俺にもその責任の一端はあるのだが。
その白い胸元に、俺の散らした紅い華が見えた。襟の詰まった服でなければ見えそうな位置・・・。
「怒られるかな・・・?」
そっと指先でその華をなぞってみる。くすぐったいのか、彼女が身じろぎした。
ダメだ、これ以上、いっしょのベッドにいたら彼女を起こしたくなってしまう。
いつも通り身支度を整え、出勤するまえにもう一度だけ寝室をのぞいてみる。
先ほどと全く同じ体勢のまま、はぐっすり眠っている。
これではいくら午後から出勤とはいえ、遅刻してしまいそうだな。
しばらく考えたあと、彼女のために目覚ましをもう一度セットしなおした。
「遅刻するなよ?」
眠る彼女に軽くくちづけて、静かに俺は部屋を出た。
空は快晴。ひんやりとした朝の空気が心地よかった。
・・・さて、彼女になんと提案しようか?『一緒に暮らしたい』と。
朝の柔らかな光のなか、俺はこれまでにない難問に頭を悩ませていた。
【あとがき】
おめでとう、ヒムロッチ!
結局お誕生日に間に合いませんでしたが(汗)それというのも、ガンダムSEEDのタイピングゲームなんぞを
2時間もやってる私が悪いのです(^^;)・・・子安さん、出てこないじゃんかよぉ(怒)
ステージ、全部クリアしちゃったよ?
井上和彦さんも大好きvvですが、子安武人さんも好きですvv ガンダムSEEDも子安さんがでてるので見てました。
ガンダムは子供の頃も見てましたが(再放送ですよ、たぶん(^^;))、ガンダムSEEDはおもしろかったです。
ただ最終回を見逃したのが悔しくて(涙)今週から毎日放送で再放送するらしいので全部録画するぞ!!
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
2003年11月7日