雪
「雪遊びしよっ!」
白いコートを着たは、ものすごく嬉しそうだ。子供みたいにわくわくしているのが見てとれる。
カカシが目をやると、窓の外の風景は白一色に染まっていた。
「寒いよ〜?カゼひいちゃうよ〜?」
「冬なんだから寒いのは当たり前!せっかく雪が積もったんだから遊ぼ!」
こたつで丸くなってるカカシを無理やり外へ引っ張りだすと、は白い雪原へと駆け出した。
カカシの忍犬たちとじゃれながら、雪の野原で遊ぶはとても楽しそうだった。
冬生まれだから冬が好きなの、と彼女が言っていたことをカカシは思い出した。
正直、こんな寒い日は暖かい部屋でのんびりと過ごしていたかった。
しかし、普段あまりワガママを言わないが『どうしても』と言うので腰の重たかったカカシも雪遊びにつきあう気になったのだ。
「あたし、雪だるま作る!」
はそう宣言して雪の玉を作ろうとするが、忍犬たちがじゃれてくるのでなかなか丸い玉を作れずに悪戦苦闘していた。
楽しそうなにつられて、カカシも冷たい雪の固まりに手を伸ばした。
「うわぁ、雪うさぎだ!かわいい〜っ!!」
「の作った雪だるまより、よっぽどかわいいデショ?」
カカシの手のひらの小さな雪うさぎは、緑の葉の耳と赤い実の瞳が可愛らしい。
「ふーんだっ、どうせあたしの雪だるまはかわいくないですよーだ!」
の作った雪だるまはお世辞にも丸いとは言えないいびつな形で、不安定な胴体の上に不恰好な頭が乗っかってるというシロモノだった。
クスクス笑いながらカカシは、雪うさぎをその不恰好な雪だるまのそばにそっと置いた。
うさぎって一羽って数えるんだっけ、じゃ雪うさぎも一羽なのか、などとブツブツ言いながらはカカシの方を振り返った。
「ね、カカシ!もう一匹作って」
「ん〜、いいけど?」
「だって、うさぎって、寂しいと死んじゃうって言わない?一匹じゃ寂しいもん」
「・・・意外とって、乙女だったりするんだね」
「う、うるさーいっ!!『意外と』は余計よ!」
真っ赤になったが可愛くて、カカシはついからかってしまう。カカシが笑うものだから、は怒って雪玉を投げつけてきた。
「もう、笑いすぎなんだってば!」
忍犬たちも混ざって、雪合戦ならぬ、雪のかけあいが始まった。
「コラ、おまえら!主人はオレだぞ」
忍犬たちはすべての味方について、後ろ足でカカシに雪をかけにやってくる。
「いいぞ〜!みんな、カカシをやっつけちゃえ!!」
アハハ、との軽快な笑い声が雪の野原に響く。
その笑い声が一瞬遠くなったかと思うと、突然降りだした雪の中での姿を見失い、カカシは焦った。
「?どこだッ?!」
「なに?どうしたの〜?」
のんきな声が背後から聞こえた。
「!」
カカシは思わずを抱きしめていた。がここに存在していることを確かめたくて仕方がなかった。
白い雪に彼女が攫われてしまったような気がして・・・怖かった。
「どしたの、カカシ?」
「がどこかへ行っちゃったのかと思って・・・」
クスリと腕の中のは笑った。
「あたしがどこか行っちゃうワケないでしょ〜!カカシを置いて、勝手に消えちゃったりしないもん。
あたし、次の任務が終わったら忍を辞めるんだよ?これからはずっとカカシのそばにいるから。
カカシの方こそ、ちゃんとあたしのトコへ帰ってきてよ?」
「オレは帰ってくるよ。ちゃんとのところへ戻ってくるから」
「よろしい!」
そう言ってはカカシの腕の中からスルリと抜け出すと、また雪原へ駆け出していった。
「ねー、その年の初雪を一番最初に捕まえると幸せになれるんだって!知ってたー?」
「ううん、初めて聞いた」
「じゃあ、約束!来年、一緒に初雪をつかまえようね!」
そう言っては笑いながら、舞い落ちる雪をその手のひらで受け止めた。
約束したのに・・・・・・そばにいると約束したのに。
が初めて約束を破った。は戻ってこなかった。
カカシの手元に戻ってきたのは、ひしゃげたシンプルなシルバーのリングがひとつ。
それは、カカシがに贈ったものだった。
身元の判別がつくようなものを身につけるわけにはいかないから、とありふれたデザインのリングを選んだ。
ネームも日付も何もない、ただのシルバーのリング・・・。
その髪のひとすじも、額当てすらも戻ってこなかった。まるで、初めからが存在しなかったかのように。
今となっては、の存在を示すのはそのリングのみだった。
また冬がやってきた。
真っ白な街・・・偶然通りかかった民家の軒先で、この家の子供が作ったのだろうか、一匹の小さな雪うさぎをカカシは見つけた。
赤い瞳が自分を見つめている。
『寂しいと死んじゃうんだよ』
ふと、の声が聞こえたような気がした。
ああ、寂しくて寂しくて死んでしまいそうだよ。でも、オレはまだ生きている。生きていくしかないんだ。
ポケットの中のリングに触れると、それは氷のように冷たかった。こうして触れていれば、いつしかその熱は伝わってゆく。
・・・・・・けれど、もう二度とそのリングにの熱が伝わることはない。
ねぇ、キミはいまどこにいるの?
オレのそばにいるの?いつになったら、オレを迎えにきてくれるの?
キミが好きだと言った冬・・・・・・白い雪がオレに舞い降りてくる。
キミのいない季節に、オレはまだ慣れることができないでいるよ・・・・・・。
【あとがき】
「あのさぁ、美咲ちゃん」
「ハ、ハイッ、なんでしょうカカシ先生ッ?!」
「なんでコレ↑、オレがひとりぼっちなの?(ジトーッ)」
「(うわぁ〜、目がコワイんですけどぉ〜!)いやその、なんといいますか『切ない系』を
目指してみたりしちゃったりしてですね・・・(汗)」
「それって、オレが相手じゃなくてもイ〜イんじゃないの?」
「はぁ、まぁそれはそうなんですけどもぉ(汗)」
「しかもさ、今日、誕生日なんでしょ?誕生日にさ、なにもこんな話アップしなくてもいいデショ?」
「た、確かにそれはそうですが・・・」
「誕生日もクリスマスもひとりぼっちだからってさ〜。ま、オレはちゃんとラブラブだけどね♪」
「(ムカッ!)ほ、ほっといてくださいよ!(怒)」
「まぁ、次はオレとちゃんのイチャパラな話を書いてよねvv」
「・・・・・・(カカシ先生が振られる話を書いてやるぅ〜!)」
「返事は?(ギロッ)」
「・・・・・・ハイ(滝汗)」
以上、壊れ気味(←既に壊れたというウワサもありますが)の美咲でございました。
(お誕生日おめでとう、私!)
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
2003年12月21日