寝 顔
「ねー、コーヒー飲む?」
キッチンから声をかけてみたけれど、カカシからの返事はなかった。
「カカシー?」
あたしがエプロンで手を拭きながらリビングへ行ってみると、カカシは眠っていた。
そこはカカシのお気に入りの場所。あたしがボーナスで買った、真っ赤なソファだ。
二人掛けのソファなんだから、カカシが寝るのにはムリがある(っていうか、あたしが寝るのもツライ)のに、彼はそこがお気に入り。
肘掛に頭をのせて、長身の彼は器用にひざをまげて、まぁるくなって眠っている。
「さっきゴハン食べたばっかりなのに。牛になっちゃうぞ〜?」
そんなことを言いながら、あたしはソファの近くの床へペタリと座り込んだ。
起きちゃうかなと思ったけれど、彼の寝息は規則正しいままだった。
「・・・・・・キレイな顔」
額当ても口布もとってしまったカカシの顔。普段陽にさらされない彼の肌は白く、端正な彼の顔立ちを引き立てている。
すらりとした鼻梁と、形の良いくちびる。その顔に斜めに走る古傷も、その美しさを損なうことはなかった。
「ね〜、ま〜だ?」
「へ?なに?カカシ、起きてたの?」
急に話し掛けられて、あたしはビックリしてしまった。でも、カカシの瞳は閉じられたままだった。
「ゴメン、起こしちゃった?」
「まだ起きてナイ」
「起きてるじゃん!」
なにをワケのわからんことを言ってるんだ?寝言ってこと?あ!寝言に答えちゃいけないんだったっけ?!
「起きてナ〜イ!だって、まだチュウしてもらってないもん」
「チュウ?」
・・・・・・チュウとおっしゃいましたか、この御方?(汗)
「だってさー、王子様はお姫様のキスで目覚めるんだよ〜?ちゃんがチュウしてくれなきゃvv」
「それって逆でしょ〜!それに、あたしの王子様はカカシってことぉ〜?!お、おなか痛いーっ!」
あたしがあんまり大笑いするものだから、カカシはちょっとムッとしたようだった。
でもまだ瞳は閉じたまま、起きようとはしない。
「ちぇ〜!オレのお姫様はちゃんだけなのに!」
そう言って、拗ねたようにくちびるを尖らせたカカシの表情はとても子供っぽくて。
それを『可愛い』などと思ってしまうあたしもかなり重症だよね?(笑)
あたしはクスクス笑いながら、カカシの柔らかな髪を撫でた。
「あたしの王子様はお疲れなんでしょ?起こしたら可哀想だから、チュウしないのよ」
「ちゃんがチュウしてくれたら、オレすっごく元気になると思うんだけど〜?」
いや、なんか別の意味で元気になりそうでコワイんですけど?(汗)
「それじゃ、お姫様も一緒に寝よ?」
瞳は閉じたまま、カカシは起き上がると、あたしをお姫様抱っこして寝室へ向かっていく。
「えっ?ちょっと、ちょっと!あたし、まだお風呂掃除が残ってるの!」
「ダ〜メvv」
あたしの王子様(笑)は、器用に障害物を避けて寝室へ入ると、あたしをそっとベッドの上に降ろした。
そして、自分も隣にもぐりこむ。
「じゃ、おやすみvv」
あたしの抗議はまったくムシか〜?!
起き上がろうとするけれど、カカシの両手がガッチリ腰にまわされていて、とてもじゃないけど起き上がれない。
「んも〜っ!」
「ほら、暴れないの」
じたばた暴れてみたけれど、力じゃ敵うはずもない。
しばらくすると、カカシは穏やかな寝息を立て始めた。
「・・・・・・もう」
仕方なく、あたしも瞳を閉じた。久々のお休みだから、家のコトいろいろやりたかったのになぁ・・・。
冷たかったお布団が、二人の体温で暖かくなっていく。カカシの穏やかな寝息に誘われ、いつのまにか、あたしも眠ってしまっていた。
「ヤレヤレ、やっと寝たか〜」
オレの腕の中のちゃんは、スヤスヤと気持ち良さそうに眠っていた。やっぱり少し疲れているようだ。
「ちょっと頑張りすぎだよ・・・」
オレは、ちゃんを起こさないように、そっと起き上がった。ま、そのへんは忍者だから、絶対起こしたりしないけどね♪
何にでも一生懸命で、手を抜くってことを知らないんじゃないかと思うオレの恋人は、近頃仕事が忙しくて。前の晩帰ってくるのが遅くても、次の日はちゃんと定時に出て行く。
『ちょっと遅れてもいいんじゃない?』と言ってみても、『他の人もちゃんと来てるから』と言って、聞き入れてはくれない。
久々の休日の今日もゆっくり寝てればいいのに、『寝ているのがもったいない』と言って早々に起きだしてくる。
「頑張りやさんなのは認めるけど、もうちょっとオレに甘えてよ・・・?」
スヤスヤ眠る可愛いちゃんの頬に軽くくちづけて、お風呂掃除をするべく、オレは浴室へ向かう。
・・・ああ、そうだ。夕飯のメニューも考えなきゃね♪
【あとがき】
す、すいません。先に謝っておきますm(_ _)m
今年最初の創作がこんなだとは・・・先が思いやられます。
カカシ先生の偽者度120%です(汗) 今書いてるのが行き詰まってしまって、ずいぶん前に途中まで
書いてたモノをひっぱりだしてまいりました。お、『NARUTO』ではもっとも短文ですね〜。
・・・て言うか、ぷちっと切ってしまったような感じ?(^^;)
『30のお題』って、なんとなく短文のイメージがあるのですが、私が書くと長いです(^^;)
お題は『寝顔』ですが、あんまりそれっぽくないかも。。。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
2004年1月7日