「ねぇ、カカシ」
「なぁに?」
外は雨。久しぶりの休日だというのに、オレたちは家の中でごろごろしていた。二人でならんで座って、見るともなくテレビを見ていた。
「手、つないでもいい?」
「どしたの、急に?」
「あたし、カカシの『手』が好きなんだもん」
けれど、と言いかけたオレを見て、彼女は『わかってるよ』とでもいうように微笑んだ。
「あたしに触れるカカシの『手』は優しいもの」
そういって、彼女はオレの手をそっと握った。
「だから、好き」
キミの握りしめているその手が何をしてきたのか、わかっているの?
この手が、どれほどの命を奪ってきたのか、知っているの?


――全てをわかっていて、それでも彼女はオレの手をとってくれる。
オレが『優しい手』の持ち主でいられるのは、キミのおかげかもしれない。
キミがオレの手をとってくれるから、オレを好きだと言ってくれるから、自分のコトを好きでいられるのかもしれない。


消えてしまえばいい。無くなってしまえばいい。ずっと自分のことをそう思ってきた・・・。
だけど、キミはオレのことを好きだと言ってくれた。
キミが好きだと言ってくれるオレは、本当のオレの何分の一かもしれない。
でも、オレはここに居ていいんだよね?キミは、オレのそばに居てくれるんだよね?
――キミがそばに居てくれるなら、オレは『優しい手』を失わずにいられると思う。


「あした、晴れたら散歩にでも行こうか」
「うん!」
うららかな春の日。キミと手をつないで、出かけようか・・・。




【あとがき】
名前変換なしで書こうと思った一作。ずいぶん昔に書いたので、季節は「春」です。。。
暗くてスミマセン。。。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。
 2004年5月9日