Oh My Girl?! 後編




「じゃ、どこかでお茶でもしようか」
「そうね」
約2時間の映画が終わって、映画館を出た。クーラーのきいた映画館から出てくると、外はまだ暑いなぁとは思った。
「じゃあ、ハイ!」
「ハイ?」
隣に立つカカシが左手を差し出している。きょとんとしているをクスリと笑うと、カカシはの右手を取った。
「手をつなぐのはお約束デショ
「えぇーっ?!」
「なんでそんなに驚くの?」
クスクス笑いながら、カカシは歩き出す。当然手をつながれたもついていくしかない。
「ちょ・・・っ!?恥ずかしいってば!」
「なんでー?」
「アンタこそ、なんで周りの視線に気づかないのよ!?」
は真っ赤になっていた。カカシとが歩いているのは平日の里の大通り。
ただでさえ通行人は多い。
そのうえ、隣にいるのはあの『写輪眼のカカシ』である。あのエリート忍者が平日の真昼間、女と手をつないで歩いているのである。視線は自然とカカシに集まり、当然一緒にいる女性は誰なのかという興味津々の視線がに向かってくるのである。
「みんな見てるじゃないのよ!」
「気にしない、気にしなーい♪」
「でも・・・っ」
「――じゃ、オレだけ見てれば?」
「え?」
カカシはふと立ち止まって、の柔らかな頬にそっと右手を触れさせた。
「周りなんか気にしなくていい・・・。オレのことだけ見て」
「カ、カカシ・・・?」
レンズ越しに見たカカシの瞳には、からかうような様子など全くなく、その真剣な眼差しはをドキリとさせた。
「・・・いーいご身分だな、カカシ。真昼間から女連れとはよ〜?」
「うるさいなー!オレは今日オフなんだよ」
の背後から声をかけてきたのは、同じく上忍の猿飛アスマであった。
「ん・・・?もしかして、か?」
くるりと振り返ったを見て、アスマが驚いたような声をあげた。
「こりゃまた見違えたな・・・」
「うるさいわね、どうせ『馬子にも衣装』とか思ってるんでしょ!」
恥ずかしいのか、ほんのりと頬を上気させたはなんとも色っぽくアスマの眼には映った。
「コラ、ヒゲクマ!あんまりジロジロ見るんじゃなーいの!」
「誰がヒゲクマだ!?それに見ても減るもんじゃねぇだろ」
「減る!」
そう断言したカカシは、とアスマの間に割って入り、アスマの眼からを隠した。
「ほら、お前の部下が待ってるぞ!」
「おっと、そうだった。じゃあな、!今度は俺と付き合ってくれよな」
「早く行け、ヒゲクマ!」
ヒラヒラと手を振ってアスマが行ってしまうと、カカシは苦虫を噛みつぶしたような顔をしていた。
「どうしたのよ、カカシ?」
「・・・なんでもない。さ、行こ」
カカシは再びの手を取り、歩き出した。


「うわぁ〜、きれーい!」
アスマと別れた後、二人はウィンドウショッピングをし、お洒落なレストランで夕食をとり、そして夜景を見ようと火影岩までやって来たのだった。
「ああ、そうだな。ココから見る里が一番好きだな」
「うん、あたしも」
眼下に広がるあのひとつひとつの明かりの下には人が居て、いろんな想いを抱えながら生きている。
そう思うと、なんだか不思議な気がしてくるのだ。
「あのね、カカシ・・・」
「ん?」
「今日、どうしてあたしとデートしようなんて言ったの?」
はずっと気になっていたことを、思い切って尋ねてみた。
「だって、とデートしたかったから
カカシはずっとかけていたサングラスを外して、にっこりした。
「答えになってないってば!」
「だって、それが答えだもーん。オマケに誕生日だし」
カカシはポケットからタバコをとりだすと、火をつけた。
「そうよ、誕生日なのよ!なんでワザワザそんな日にデートしようなんて言うのよ?!
 カカシのせいで、あたし、女のコたちに睨まれちゃったわよ!」
昼間、カカシと連れ立って歩いていると、何人もの女のコが
「お誕生日、おめでとうございます!コレ、受け取ってください!」
と、綺麗にラッピングされたプレゼントを差し出してくるのだ。しかし、カカシはひとつも受け取ろうとはしなかった。
「ゴメーンね?オレ、いま『彼女』と一緒だから」
そう言って、カカシは次々と断っていく。その度にはキッと睨まれ、寿命が縮まるような思いをしたのだ。
「それにカカシが『彼女』なんて言うから、ヘンに誤解されちゃったじゃないの」
カカシは、フーッとタバコの煙を吐きだした。
「ちょっと目つぶってよ、
「へ?」
「いいから」
不思議に思いながらも、は素直に目を閉じた。しばらくして、ふわりとタバコの香りが漂ったかと思うと、柔らかなものがくちびるに触れ、そして離れた。
「・・・なっ、何するのよ?!」
月明かりの下でもわかるほど、の顔は真っ赤になっていた。
「ダメでしょ、ー?オトコの前で簡単に目なんかつぶっちゃ。ま、相手がオレだからイイけど」
驚いたは口をパクパクするばかりで、言葉がでてこない。
「誕生日くらい、好きなコと二人っきりで過ごしたいデショ。ま、スカートはいてきてって言ったのは、
 普段のボーイッシュなも好きだけど、オレのためにお洒落したを見てみたくなったから
 だったんだけど・・・。でも、失敗しちゃったよ〜」
カカシの『失敗』という言葉にピクッと反応する。やっぱりスカートなんか、はくんじゃなかった・・・っ!
「みんなに、がどれだけ可愛いかバレちゃった」
顔から火が出る、というのはこのことか・・・!
しれっとした顔でとんでもないセリフを吐くカカシに、は頭に血が上るやら頬が火照るやら・・・。
「で、返事は?もちろん、もオレのこと、好きだよね〜?」
『だよね』って何なのよ?なんでそんな断定的なのよっ?・・・ていうか、バレてたってコト?!
かぁぁと頬に血が上る。は、自分の気持ちはカンペキに隠せているものだと思っていた。
ボーイッシュなスタイルとさっぱりした性格も相まって、には異性の友人の方が多い。
しかし、それは『異性』の友人というよりも、『同性』の友人のような関係で・・・。
カカシに対するの想いは特別なものだったが、カカシにとって自分は単なる『友人』に過ぎない。
――もし、この想いを告げてしまったら?
想いが通じればなにも問題はない。が、もし通じなかったら今のような関係も崩れてしまうだろう。
はそれが怖かった・・・。
それならば『友人』としてでもいい。カカシのそばに居たい、とは思ったのだ。
だからこそ、この想いをずっと封じてきたというのに・・・!
冗談でもカカシが『好きだ』と言ったことに無性に腹が立ってしまったのだ。
「――なに勝手なコト言ってるのよ」
「へ?」
「なにが『好きなコ』よ?!ひ、ひとのコトからかうのはやめてよねっ」
「あ、あのちょっと、?」
真っ赤になって怒り出したの剣幕に、カカシは驚いた。
「あたしのコトなんか、同性の友達くらいにしか思ってないクセに!
 今日だって可愛い格好してこいって言ったのも、普段オトコっぽいあたしがどんな格好してくるか
 面白がって言ったんでしょ?か、からかうのもいい加減にしてよねっ!
 カカシなんて・・・カカシなんて、大キライなんだからっ」
一息でまくしたてると、はうわーんと泣き出して、その場にしゃがみこんでしまった。
「ちょ・・・ちょっと、?!」
カカシは困ったなぁとでもいうように頭をポリポリ掻くと、自分もの前にしゃがんだ。
「あのね、
 オレは、のコトを『同性の友達』だなんて思ったコトはなーいよ?一度もね。
 そりゃ任務の時は頼りになるパートナーだと思ってるけどさ・・・。
 オレにとって、は最初っから『可愛い女のコ』だよ」
「・・・そ、そんなコト、急に言われたって信じられな・・(ひっく)」
「オレの気持ち、にはバレバレだと思ってたんだけど?」
「・・・(ひっく)」
は心理分析得意デショ?だから、オレの気持ちなんか、とっくに知ってるんだと思ってた」
「カ、カカシの心理分析なんか出来るヒトが居たら、お目にかかりたいわよっ!
 いつだって飄々としてて、つ、掴み所がなくって・・・本心なんか、誰にもわかんないわよっ」
「じゃ、今日わかったデショ
「・・・・・・!」
「で、の気持ち、教えてよ?ん〜?」
なかなか答えようとしないに不安になったのか、カカシはの顔を覗き込んだ。
「・・・もしかして、違った・・・?」
「・・・ち、違わ・・・ない・・・」
それは小さな声だったけれど、カカシにはちゃんと届いた。ふわり、とカカシは微笑んだ。
「良かった〜じゃ、もう一回、目つぶって
「!?」
うう・・・と迷いつつもは目を閉じて、二人の影はさっきよりも長い時間重なったままだった。
「来年も再来年も・・・ずっと、オレの誕生日を祝ってくれる?」
「・・・あたしに、一番に『おめでとう』って言わせてくれるならね」
カカシとは顔を見合わせて笑った。
「そろそろ帰ろうか」
「うん」
今度はなんのためらいもなく差し出されたの手に、カカシは嬉しい驚きを感じながら
自分より一回り小さな手を優しくそっと握った。


夜を往く風は優しく頬を撫で、秋の気配が漂い始めていた。


あなたの生まれた日をお祝いしよう。あなたの生まれた日に感謝しよう。
来年も再来年も、ずっと、ずっと・・・。




【あとがき】
カカシ先生、お誕生日おめでとーっ!!
お誕生日ネタは尽きたか、と思っていたのですが、なんとか書けました(笑)
管理人の初創作はカカシ先生のお誕生日話でした〜。あれから1年近く経つのかぁ・・・。
相変わらずカカシ先生萌えは続いておりまする(笑)

某企画の某管理人さまズに捧げます。楽しい企画をありがとうございますー!


最後まで読んでいただいてありがとうございました。
 2004年9月1日