HOLY NIGHT
「ハイ、37度8分。りっぱな風邪だね〜」
恋人のの差し出した体温計を見て、カカシはキッパリと言った。
「・・・(ずぴーっ)」
昨日の夜『寒気がする』と言っていただったのだが、やはり風邪を引いてしまったらしい。
「うう・・・ごめん・・・・・・」
「謝らなくてもいーよ。病気なんだから」
「でも・・・」
ベッドの中から申し訳なさそうにこちらを見上げているに、カカシは優しく微笑んだ。
「ほら、余計なことばっかり言ってないで、はやく治さなきゃ」
「・・・でも、今日はクリスマスイブなのに」
が申し訳なさそうにしているのももっともで、今夜はクリスマスイブなのだ。
二人が恋人になって迎える初めてのクリスマス――今夜は二人で出かけるはずだった。
仲の良い友人たちと店を借り切って、朝まで騒ごうという予定だったのだ。
「そうだねー、クリスマスだね〜」
「・・・あたしなら一人でも大丈夫だから、カカシ、パーティに行ってきたら?」
「ちゃんを一人残して?そんなコト、できるワケないでしょー」
「でも、パーティに行くつもりだったから、ウチに何にも用意してないよ?」
の言う通り、この部屋にはクリスマスらしいものは何もなかった。
ツリーもケーキも、キャンドルもない。あると言えば、壁にかかったのワンピースくらいだ。
カカシとパーティに出るつもりで、何日か前に奮発して買ったおしゃれなワンピース・・・。
はちょっと恨めしそうにワンピースを見つめた。そんなを見て、心配げなカカシだったが、ふと何事か思いついたらしい。
「食欲ある?何か食べれそう?」
「ううん、あんまり・・・。お腹すかないし」
「じゃあ、プリンは?アイスクリームもあるよ?」
「プリンかぁ・・・アイスにも心惹かれるものがあるなぁ」
「そんな欲張りなアナタに、プリンアイスもご用意していま〜す♪」
「え、ホントー?」
「ちゃんの大好きな、あの限定のヤツ」
途端にの顔がパァッと明るくなる。そのプリンアイスはが気に入っていて、ほぼ毎日と言っていいほど食べていたのだ。
しかし、あまりに人気が出すぎたせいか、最近手に入らなくなっていた。
「食べる?」
「うん!」
さっきまでのグッタリした様子はどこへやら元気に答えたに、カカシはつい笑みがもれそうになるのをガマンしつつ、キッチンへ行ってのためにアイスを取り出してきた。
「ちょっと待ってね〜」
カップを開け、スプーンですくう。
「ハイ、あ〜んvv」
「・・・自分で食べれますし(汗)」
「あ〜んvv」
なおもしつこくスプーンを差し出してくる恋人に根負けしたのか、溶けていくアイスクリームの魅力に負けたのか、は口を開けた。
「おいしい?」
「・・・うん」
熱のせいなのか、恥ずかしさのせいなのか、の顔は真っ赤になっていた。
「じゃあ、ハイ」
小鳥の餌付けよろしく、アイスクリームが口の中へ放り込まれる。
ひんやりとしたクリームが口の中で溶け、バニラビーンズの香りとカラメルの甘さが口の中に広がる。
「おいし〜い」
さっきまでの具合の悪そうな様子はどこへやら・・・。幸せそうなの顔に、カカシもつい嬉しくなる。
「良かったv」
結局、はアイスクリームを全部食べてしまい、ほんの少しカカシを安心させた。
薬は飲んでいたが、まだ熱が下がらないようで、額に当てたタオルが生温くなっていた。
「タオル、換えようか」
「うん、ありがと。・・・来年はちゃんと準備するからね」
「期待しないで待ってるよ(クスクス)」
「ちゃんとするもんっ」
むぅとくちびるを尖らせたを笑いながら、カカシはベッドの脇へ腰掛けて、を寝かしつけようとする。
「そ、そんな見てられたら寝られないよぅ〜(汗)」
「だってさー、ちゃんとふたりっきりの時って少ないんだもーん」
には友人が多く、カカシとふたりで出掛けても必ず誰かに声をかけられてしまうのだ。
もちろん友人達と過ごすのは楽しいのだが、ふたりっきりになりたいというのもカカシの本音なのだ。
「でもあたしっ、今すっぴんだし、寝すぎて目腫れちゃってるし!だから、そんな見ないでっ(汗)」
「えー?ちゃんはいつでも可愛いよ〜v」
「・・・・・・うう、もう寝る(熱上がっちゃうよ〜)」
恥ずかしげもない(?)恋人の言葉にかぁぁと赤くなったは布団に潜りこんでしまい、さらにカカシの笑いを誘った。
しばらくして、すやすやと穏やかな寝息が聞こえてきて、カカシもほっとため息をついた。
「――ちゃんはね、頑張りすぎなんだから」
が今夜カカシと過ごそうと、一生懸命スケジュールを空けようと頑張っていたのは知っていた。
そのせいでカゼをひいて、寝込んでしまったのだから。
「・・・でもね、ちゃんがカゼひいたおかげで、独り占めできて良かったかも・・・なんて、ね。
聞かれたら怒られちゃうかな?」
ふっと優しい笑みを浮かべると、カカシは寝乱れたの髪をそっとかきあげた。
ツリーもケーキも、キャンドルもチキンもなくったってかまわない。あなたが傍にいてくれるのなら。
大切なあなたがとなりにいる――それは最高のクリスマス。
ふたりきりの聖なる夜は静かに更けていく。
【あとがき】
クリスマス企画サイトで一番最初にアップした作品。
頭の中の糖度計(?)が壊れていた模様です・・・(笑)
文中のプリンアイスはハーゲンダッツですv おいしいですよね〜(笑)
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
2005年1月1日