Keep on lovin' you.
キミは誰かに『好き』って言ったことがある?
単純に考えれば「す」と「き」を続けて言えばいいだけなんだ。
それはわかってる・・・わかってるんだけどさ。
「ごめーん、遅くなっちゃった!」
「ううん、オレもいま来たところだし」
この会話だけ聞いてると、オレたちがつきあってるカップルみたいに思われるかもしれない。
でも、実のところ、『友達以上恋人未満』のような関係で。
・・・しかも、そう思っているのはオレだけかもしれない。彼女にとって、オレはただの『友達』かもしれないのだから。
「だって、カカシってば急に呼び出すんだもん!」
「オレの誘いはいつだって急デショ」
里の上忍としていつ何時任務が入るかわからないオレは、あまり約束をしたことがなかった。
「それはそうだけどさぁ〜。あたしにも都合ってモノがあるのよ。知ってる?」
はそう言うと、オレの目の前で人差し指を振った。
「知ってるよー。でも、そのわりにはオレが誘うと、いつだって来てくれるじゃない」
オレがそう言うと、は一瞬言葉に詰まったように見えた。でもすぐに、ちょっとほっぺをふくらませた。
「それはね、たまたまヒマだったからよ!」
「じゃ、いつもヒマなんだ」
オレがクスクス笑っていると、はさらにふくれた。もちろん本気で怒ってるわけじゃない。
こんな、なんでもないフツーの会話が楽しいのは、相手がだからなのかな?
「ほら、早く行こうよ。オレ、おなかペコペコなんだよね」
「うん!」
オレとは連れ立って、日の暮れかけた里の商店街を歩いていた。
この季節、里はクリスマスに向けて美しく飾られていた。あちこちでツリーやリースが飾られ、イルミネーションが彩りを添えている。
「もうすぐクリスマスなんだねぇ」
「ああ、今年も終わりだなぁーとか思っちゃうね」
は美しく飾られたツリーに目を奪われているようだ。楽しそうなを見ているのは、オレも楽しい。
「あたし、クリスマスって大好き!」
「そうなの?プレゼントもらえるから?」
それもあるけど、とはクスリと笑った。
「街がね、きれいに飾られるでしょう?見てるだけで、なんだかワクワクしない?」
「ああ、そうだな」
瞳をキラキラと輝かせて、は楽しげにしゃべっている。
「今年のクリスマスの予定は?」
「うーん、まだ決めてないんだ。みんなで騒ごうってパーティーに誘われたんだけど、まだ返事してないの」
「ふぅん」
どうしてオレは『じゃぁ、オレにつきあってよ』なんて言えないんだろう・・・?を誘うチャンスだっていうのに。
女のコに告白したことがないわけじゃない。『好きだ』なんて、遊びなら何度でも言えるのに。
・・・でも、にだけは言えない。
好きなコに『好き』って言えない。オレってば、こんな意気地なしだったのか・・・?!
「カカシ!どこ行くつもり!?」
「へ?」
考え込んでいたオレは、いつのまにやら店を通り過ぎていたらしい。が怪訝そうにオレを見ていた。
「ごめん、ちょっとぼーっとしてた」
「大丈夫〜?」
「ああ、大丈夫!ほら、早く入ろう!」
オレはの背を押して、店へと入った。
「あー、おなかいっぱいだー!」
「食べすぎなんじゃないの、ってば」
「だって、美味しかったんだもん」
店の外へでると、外はすっかり暗くなっていて、いっそう寒さが厳しくなっているように感じた。
「星がキレイ〜!でも、明日も冷え込みそうね」
空には雲ひとつなく、星が瞬いていた。きっと明日の朝は冷え込みが厳しいだろう。
「そうだねー。明日も任務なのになー」
オレがぶつぶつ言ってると、が笑った。
「忍者のクセに、何言ってるの!」
「だって、寒いもんは寒いの。てゆーか、に言われたくないんだけど?」
さすがに休日はオレも忍服じゃない。普通のセーターにコート。一方も似たようなスタイルだが、かなり厚手のコートに、マフラーをぐるぐる巻きにしていた。
「だって寒いじゃない!」
はそう言うと、指先が冷たいのだろうか両手を合わせて息を吹きかけた。
「手袋はしないの?」
「今日、片方失くしちゃったの」
気に入ってたのにな、とがコートのポケットから取り出したのは片方だけの手袋。
「あたし、冷え性なんだもん」
むぅとした顔でしゃべっていたかと思うと、は突然駆け出した。
「?!」
慌ててオレは追いかけると、はあっという間に見つかった。
「、どうした・・・」
「見て!」
が指差したのはキラキラと輝くツリー・・・。
里の大広場に毎年飾られる、とても大きなツリーだ。ライトにスイッチがいれられたらしい。
道行く人々も足を止めて、ツリーを眺めている。
「キレイね・・・」
「ああ」
ツリーを見上げるの横顔は、さまざまな色のライトに彩られて、とても美しかった。
子供みたいにはしゃいでいる・・・の傍で、のそんな顔をずっと見ていられたら、とオレは思った。
「?」
「ん?」
は返事をしたけれど、視線はツリーに釘付けだ。
「・・・オレ、のことが好き」
は一瞬驚いたような顔でオレを見て、それからちょっと恥ずかしそうに笑った。
「あたしも」
「・・・!」
オレが驚いた顔をしていたせいだろうか、はクスクス笑った。
「もしかして、気づいてなかった?」
「・・・まったく」
オレたちはなんとなく目を見合わせて、エヘヘと照れ笑いを浮かべた。
「ツリー、キレイだね」
「うん・・・」
オレたちはふたり並んで、キラキラと輝くツリーを見上げていた。
しばらくすると、がまた手に息を吹きかけている。きっと手が冷たくなってきたんだろう。
「手袋、失くしたのってどっち?」
「え?」
キョトンとオレを見上げただったけど、ガサゴソとコートのポケットを探って、手袋を出してきた。
「うーんとね、右手の方を失くしちゃったの。明日にでも買いに行かなくちゃ」
「じゃ、左手だけつければ?」
「へ?」
オレは左手での右手をとり、オレのコートのポケットへ一緒につっこんだ。の言うとおり、その手はひんやりとしていた。
「これで右手はあったかいデショ?」
「・・・!」
かぁぁとが真っ赤になった。オレはポケットの中で、の小さな手をそっと握りしめた。
「は、恥ずかしいじゃないのっ!」
「でも、手袋失くしたんデショ?」
「うう・・・」
はしばらく呻いていたけれど、ボソリと小さな声で呟いた。
「・・・あったかいから許す」
「寒い夜も悪くないねーv」
「もう、カカシったら!」
オレたちはクスクス笑いながら、クリスマスの街をゆっくりと歩いた。
と知り合ってから、二度目のクリスマスがもうすぐやってくる。
オレは少し早めのクリスマスプレゼントをもらったらしい。
【あとがき】
クリスマス企画第2弾。ポルノグラフィティの『Sheep〜song of teenage love
soldier〜』を 聴きながら書いておりました。
管理人もカカシ先生も、当にティーンエイジャーではございませんが(笑)
素敵な曲ですので、ぜひお聴きになってくださいね♪
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
2005年1月1日