Say You Love Me 第3話
その夜以来、がフラリと店を訪れると、偶然にもカカシが居て。そんなことが何度が続くうち、約束を交わしたわけではなかったけれど、週に一度、カカシと一緒に食事をするのが習慣になりつつあった。
「こんばんは、さんv」
「あ、カカシくん!今日はもう来ないのかと思ったわ」
ひとりで先に食事を始めていたが席を詰めて、カカシの場所を空ける。
「ちょっと任務が長引いちゃってねー」
「ケガとかしてない?」
「うん、ダイジョーブ」
料理を何品か追加し(もちろん魚料理だ)、ビールも頼む。大将の料理を楽しみつつ、他愛もない話をする。
時には仕事のグチを聞いてもらいながら・・・。
「ねー、カカシくん?」
「んー、なぁに?」
「カカシくんってさ、あたしなんかと飲んでて楽しい?」
ずっと前から気になっていたのだ。自分はフツーの会社員で、とりたてて美女というわけでもなく、会話が堪能なわけでもない。
話すことといえば、他愛もない世間話か、仕事のグチである。
一方、カカシはといえば、ぽや〜んとした、ホントに忍者かと思うようなぼんやりした青年だが、顔立ちも整っていて、スラリとした体躯も女性の目をひくだろう。
愛読書のイチャパラを手放さず、堂々と読んでいるところが難点といえば難点なのだが・・・。
「えー?楽しーいよv」
「そぉ?」
うんうん、とカカシは頷きながら、魚料理をつついている。
「ふーん」
なんとなく納得しないながらも、はビールを飲み干した。カカシがビールを注いでくれた。
「だって、オレって忍者でしょ?」
「うん。一応は」
「あのねー、『一応』は余計でしょ(笑)」
「えー、だって、カカシくんってば、全然忍者っぽくないんだもん。
なんか、ぼや〜っとしてて面倒見てあげなきゃイケナイ弟みたいだし」
「『弟』ねぇ・・・」
「あたしより年下じゃない」
「そりゃそーだけど」
カカシは不満そうに口を尖らせたが、は気づかなかった。
「で、なんだっけ?」
「ああ、そうそう。オレって『一応』忍者じゃない。やっぱ、特別視されちゃうことが多いんだ」
「ふんふん」
「でも、オレとしては、フツーのお付き合いがしたいわけ」
は、『フツーのお付き合い』ってどんなのだろう、と思ったが、適当に相槌を打った。
「ふーん。あたしってば『一般人代表』ってことか」
「やっぱ、さんってオモシロイよ」
はキョトンとしていたが、カカシは楽しそうに笑っている。
「そうかな〜?後輩たちにはコワ〜い先輩と思われてるんだけどなー」
「そうなの?」
「『厳しい』んだって、あたし。自分じゃそう思わないんだけど・・・」
「さんは優しーよv」
「どうかな・・・」
ふぅ、とはため息をついた。気がつけば女性社員の中では年齢が一番上になって、仕事をキッチリこなすは上司の信頼も篤いが、それに伴って責任も重くなってくる。
当然のことながら後輩に対する指導も厳しくなりがちだ。
「さんは後輩に厳しいかもしれないけど、自分にも厳しいデショ?仕事も手を抜いたりしないし」
「そんなこともないけど・・・」
「ま、もう少し肩の力を抜いてもイイかもしれないって思うけどね」
「そう言うカカシくんは抜けすぎだけどね」
「うっわー、ヒドッ!」
ふたりで顔を見合わせて、ぷっと吹き出した。とりあえず、何にかはわからないが乾杯をした。
と飲むのはやっぱり楽しい、とカカシは思った。はあまり忍者とのつきあいがないのだろう、カカシがあの『写輪眼』とは気づいていないようだった。
例え、そうだと知ったとしても、なら――自分を特別視したりしない、とカカシは思っている。
いつもと同じ態度で、同じ口調で、自分に接してくれるだろう。
カカシは、に魅かれている自分に気がついていた・・・。
正直なところ、『写輪眼のカカシ』『コピー忍者のカカシ』『里一番のエリート忍者』という通り名に魅かれて自分に近づいてくる女性たちには、うんざりだった。
相手がカカシのイメージに魅かれているのなら、自分もその程度の愛情でしか返せない。
カカシは、本当の自分を見て欲しかった。
の視線はいつも真っ直ぐで、曇りがない。そして、ちゃんと自分の足で立っている。
自分に寄りかかってくるだけの女はいらなかった。
自分と対等の立場で、隣を歩いていける女――そんな女を愛したかった。そんな女に愛されたかった。
は自分をどう思っているのだろう?年下のせいか、どうにも『弟』のようにしか思われていないような気もするが・・・。
こうして特に約束もせず、けれど毎週のように逢っていることをはどう思っているのだろう?
――との関係を変えたい。
カカシはそう思っていた。
【あとがき】
カカシくんと飲みに行ったら、楽しそうだな〜vv・・・っていうか、隣にすわっておしゃべりして欲しい(笑)
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
2004年4月20日