Say You Love Me 第4話
「ハァ・・・」
は深いため息をついた。少し離れた席の後輩達が心配そうにを見ていた。
カカシの家から逃げるように帰ったあと、慌てて着替えて、遅刻ギリギリで出社したのだ。
朝から仕事に身が入らず、はぼんやりとしていた。
とりあえず部長に頼まれていた見積書を作ってみたものの、肝心の見積金額を間違っていて、部長にこっぴどく叱られたのだ。
「午後からユーザー先に持ってくから、それまでに修正しろっ!」
もう一度金額を計算しなおしてみるが、何度やっても金額があわない。
「・・・ったく、もう」
ワシャワシャと頭を掻き毟りたい気分だった。電卓を何回も叩いてみるが、やるたびに答えがあわない。
「さん、私やりましょうか?」
「え?」
が顔を上げると、デスクの脇に後輩の女性社員が立っていた。
「大丈夫ですか?どこか具合が悪いとか・・・?」
気がつくと、周りの後輩達が心配そうに自分を見つめていた。
「ううん、大丈夫よ。じゃ、悪いけどお願いできる?」
「はい。あ、でも後でチェックお願いしますね」
書類を渡すと、はまた深いため息をついた。
「どーしたんですか、さん?」
コトリと音がして、デスクにがいつも使っているマグカップが置かれた。顔をあげてみると、今度はまた別の後輩だ。
「あ、ありがと」
「なんだが、いつものさんらしくないですけど?」
「そーかな・・・」
また、はため息をついた。周りの後輩たちは、体調は悪くないと聞いてホッとしたのか、今度は興味津々といった感じで見ている。
「もしかして・・・」
「ん?」
後輩の彼女はちょっと腰をかがめて、の耳元で小声で囁いた。
「昨夜、彼氏とケンカしちゃった、とか?」
「か、彼氏?!」
「ちょっ・・・声が大きいですよ!部長が睨んでますって」
「あ、ああゴメン」
部長がこちらを睨んでいた。は思わず赤くなってしまった顔を見られたくなくて、席を立った。
その後姿を見送った後輩たちはヒソヒソと話し出した。
「ほらー、やっぱり彼氏いるんじゃない!」
「そりゃ、いない方がおかしいでしょ」
「ちぇー、俺、結構マジで狙ってたんだけど」
「『オネエサマ』ってかー(笑)」
「仕事の時はキツい感じだけどさー、普段は結構カワイイじゃん。さっきだって、あんな真っ赤になっちゃってさ」
「昨日、さんのお誕生日だったから、一緒にゴハン食べに行きませんかって誘ってみたんだけど、
そうしたら『友達がお祝いしてくれるから』って
断られちゃったのよ。それってやっぱり、彼氏とお祝いだったのかなー?」
「あの様子じゃ、そうなんじゃないのー?」
「さんの彼氏って、どんなヒトだろ?興味あるぅ〜!」
「じゃあさ、今日飲みに行って聞き出しちゃおうよ!ちょうど週末だし」
「いいねー、それ!わたし、行っちゃう!」
「俺も行く!」
自分の居ない間に、そんな話がまとまっているとは露知らぬであった。
【あとがき】
意外に後輩たちから好かれているさんでした。カカシくん、出番ナシ・・・(汗)
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
2004年4月20日