カキ氷




オレはイチャパラを読みながら、ほんのちょっと眠ってしまっていたらしい。
リビングはクーラーがきいていて快適だったけれど、寝起きで喉が乾いていて、何か飲もうとオレはキッチンへと入っていった。
キッチンへのドアを開けると、ムッとするような熱気と、それから『シャッ、シャッ』というあまり聞きなれない音が聞こえてきた。
「何してるの、こんな暑いところで?」
「あんまり暑いから、急に食べたくなっちゃったんだよね〜♪あ、カカシも食べる?」
が一生懸命作っていたのはカキ氷。ぐるぐるとハンドルを回すと、薄く削られた氷がガラスの器に落ちてくる。
「んー、でもイチゴ味しかないんデショ」
「カキ氷といえば、イチゴ味が基本じゃない!」
彼女が差し出したのは、真っ赤なシロップ。お世辞にも身体に良さそうとは思えない。
「それ食べると、舌が赤くなっちゃうんだよね」
「あたし、もうなってる?」
赤く染まった舌がチラリとくちびるの間から見えた。ふと悪戯心がわいて、のくちびるを盗む。
「・・・んっ・・・・・・」
ひんやりと冷えていたくちびるが、オレの熱で溶けていく。しばらくその冷たさを楽しんでくちびるを離すと、真っ赤な顔でがオレを睨んでいた。
「やっぱり、イチゴ味は甘すぎるかなー」
「・・・もう・・・このバカッ・・・」
そんな顔で睨んでも、全然迫力ないよ?それよりも・・・
赤く熟れたイチゴみたいなくちびるでオレを誘惑するのはヤメて欲しいね・・・。
歯止めがきかなくなっちゃうデショ?


――氷が全部溶けて、彼女にこっぴどく叱られたのはもう少し後のお話。




【あとがき】
うーん、結局今年はカキ氷を一回も食べずに夏が終ってしまいました・・・。
イチゴよりも宇治金時がいいなぁ(笑)


 2004年9月12日 (web拍手オマケページにて使用)